2020年2月2日 by ごきち
◆序章
年末年始の大型連休に手持ちのヘッドホンを聴き捲くった。
おかげでコストパフォーマンスが高いことが分かったMDR−V6
MDR−CD900 と瓜二つの低域のふくよかさとタイトな超低域。
MDR−CD900ST にはない中域のフラットさ。
MDR−7506 まで際立たない高域。
逆に CD900ST、7506、V6は勿論、安価なATH−M30までもが奏でる高域の艶が表現できない事が判明したMDR−CD900
35年を経過した物とは思えない高級感のあるケーシングとカールコード。
しかし肝心のダイヤフラムは既に賞味期限を超えていた。
Money for nothing/Dire Straits (remaster) を V6 で聴いていて。
サビの、
「We got to install microwave ovens. Custom kitchen deliveries.....」
で、スネアの裏で二回に一回、タンバリンの鈴音が聞こえた。
聞き比べをしていなければ全く分からない程度の違い?
いや、聞こえて当たり前の音が MDR−CD900 では聞こえない事が分かった。
どうしてもMDR−V6と同じ音色を手に入れたい。
そこで、
@プレミアが付くであろう MDR−CD900 を 無加工の現状で売り払い、それを元手に V6 を購入する案
ACD900ST 用のドライバーを移植して甦らせる案
等を思い付くが、巷には偽物V6が出回っているらしいので@案は却下。
思い切ってA案の MDR−CD900 に改造を施すことにした。
◆事前調査
現在入手可能な CD900ST 用ドライバー + 7506用 イヤーパッド の音色を確認する。
MDR−CD900ST 純正の密着型イヤーパッドを MDR−7506 用の耳を包み込む形の物と交換してみる。
交換前<MDR−CD900ST純正パッド>
MDR−CD900ST 純正イヤーパッドはサランネットが薄い。
ドライバーが丸々透けて見える。
MDR−7506 用パッドの内側には厚めのスポンジ層があるため、中低域の音色は変わるだろう。
こいつに付け替えた MDR−CD900ST 聞いてみる。
視聴の結果、中音域が若干滑らかになった分、低域が豊かに聞こえる。
ただ、緩和はされるものの、音声帯域にある若干のコワンコワン感は拭いきれない。
まずは MDR−CD900 に MDR−CD900ST 用のドライバーを換装することにした。
◆MDR−CD900 ドライバー換装
早速、 MDR−CD900ST 用ドライバーをパーツ注文する。
製造ロットが同じ物が届くことを期待してポチる。
ついでにウレタンリングも注文した。
ブラボー! 同一ロット!
左右の特性はなるべくなら合わせたいところ。
移植手術を開始する。
まずはパッドを外す
ウレタンリングはまだまだ元気っぽいので交換せずにおくことにする。
黒ビスを外して分解する
あらま、SONYお得意の分解マーキング発見!ねじの一部にお約束の黄色ボンド(笑
ドライバーの固定リングを外す
4か所の爪を対角に一か所ずつ内側へドライバーで逃がす。最後の一つを外すのに少しコツが必要か。
ケーシングからドライバーを外す
MDR−CD900ST 用とはダイヤフラムの色と後方の不織布の切欠き穴数が違う。
「チューニングが違う」
と言われる部分が、ここなのか?
とりあえず、 MDR−CD900ST 用のドライバユニットに付け替える
半田ごてで元のドライバユニットからリード線を外し新しいユニットに付け替える
穴の違いだけなのか?それとも根本的に違うのか?とりあえず換装する。
左側は右chへの送り配線があるため簡単に絵を書き留めておく
緑線が左HOT、緑スパイラルが右HOT、エナメル色はCOLD、赤は送り右HOT
左側も換装して組み立て直す。
MDR−V6 と MDR−CD900<ドライバ換装>を聞き比べる
同一条件で、聞き比べてみる。
・・・最悪だ。
MDR−7506 の如く 低域のふくよかさが無く、かといって MDR−7506 では出ていた超低域は出ず。
更にはMDR−CD900ST の中域のコワンコワンなイメージ・・・
唯一の改善点は、例の鈴音がきちんと聞こえるようになった事。
全体のバランスは MDR−V6 とは程遠く MDR−CD900ST と MDR−7506 の欠点ばかりを集結した使えないモニタが完成した。
◆ドライバーユニットのチューニングにチャレンジ
35年物ドライバーは低域のふくよかさと超低域が抜群だった。
戻そうかとも考えたが、高域の艶が聞こえないモニターではしょうがない。
歳のせいで私の耳は幾分か劣化が進み、超高域のF特も落ちてきているだろう。
しかし、聞こえている間はきちんと聞いておきたい。
そこで、 MDR−CD900ST 用ドライバーに手を加えることにした。
まず、 MDR−CD900ST、MDR−7506、MDR−V6 の物理的な相違点を探る。
MDR−V6 を分解してみる
ドライバー裏面のチューニング穴は一つだけ開いている。
同様に MDR−7506 も開けてみる
MDR−V6 と同様にチューニング穴は一つだけ開いている。
MDR−CD900ST は ドライバーユニット側にグラスウールが貼り付けてあるらしい。
とりあえず、イヤーパッドを外してみた
密閉型といいつつ空気穴を2か所発見
以上の違いの中から、 MDR−CD900 には以下の仕様に改造する。
1、MDR−CD900ST 用ドライバを装着する。
2、ケーシング内にはグラスウールは貼らない。
3、MDR−CD900ST にあるイヤーパッド面の空気穴は開けない。
4、MDR−CD900ST 用ドライバの裏面チューニング穴を一つ塞ぐ
100均で穴を塞げそうなテープを適当に買ってきた
左から製本テープ、不織布テープ1、不織布テープ2
とりあえず、粘着が一番強そうだった不織布テープ2で穴を塞いでみる。
分解して左右のドライバーに□5mm位に切った不織布テープ2を貼り付ける
左右のドライバーに貼り付けて復旧する
【視聴の結果】
なんと!中音域のコワンコワン音が抑えられ、低域が若干前に出てきた感がある。
しかし、オリジナル MDR−CD900 が奏でていた低域のふくよかさと超低域はまだまだ弱い。
使用した不織布テープは粘着強度はあるものの、若干薄っぺらいのが原因か?
しばらくエージングを進めて同じテープを二重に貼るか、不織布テープを替えてみる。
つづく
◆不織布交換 <2020年2月8日>追記
エージングごときでは拭い切れないコワンコワン感
しかし不織布で穴を一つ塞ぐことで若干ではあるが、音色がマイルドになったのは進歩である。
分解、再組立ての回数を重ねるとねじ穴をバカにしてしまう可能性があるのでなるべく控えたい。
祈る気持ちを込めて、別の不織布一枚貼りにチャレンジしてみる。
右、左とも先に貼った不織布を剥がして分厚めの不織布に張り替える
ちょっとだけ先の不織布よりも厚い
右から分解して前に貼った不織布を剥がし、分厚めの不織布に貼り換える
さて、音質や如何に
結果、あらまコワンコワン感が無くなる。
そうか、穴を塞ぐ材質でも音質がかなり変わるようだ。
ただ、低域のふくよかさと、超低域の出音はまだまだ。
厚手を2重に貼れば良かったか?
しばらくエージングしてみてラスト手術を決定する。
つづく