性能比較 MDR−CD900ST MDR−7506 MDR−V6 MDR−CD900 ATH−M30 

2020年1月3日 by ごきち

 

◆序章

 年に2〜4回、市民会館のリハーサル室を借りてロックバンドのコピーを楽しんで12年になる。

 私のパートがベース、ギター、謎のボーカル、と次々に変わるなか、不動は音響担当(笑

 マイク、ケーブル、アンプ、録音機材等・・・出費は痛いが、いい音で録ってMIXしたいという思いが機材購入を加速させる。

 

 録音機材には11年前にZOOM HD16CDを¥62,000円で購入、約9年間活躍していた。

 

 改造ハードケースのおかげで積載が可能になった。

 

 メンバーの交通手段が限られた時期、市民会館のリハーサル室に変わって駅近の某島村楽器の貸しスタジオに集まるようになると、コンパクト化を余儀なくされた。

 

 ZOOM R16 中古で¥19,800円

 

 市民会館のリハーサル室と違い、貸しスタジオにはパワードミキサー、モニタースピーカーが常設されていた。

 レコーダーとケーブル、マイクがあれば楽しめた。

 返し用のアンプとスピーカーを持ち込まなくて良いのは非常に便利だった。

 

 ただ、この中古のR16が粗悪だった。

 電源アダプターのコネクタ部分が接触不良を起こし、しばしばデータが破損する。

 アダプターを新品にするも、駄目もとで本体を分解してDCジャック部分を交換するも改善せず。

 コンパクトなのは良かったが、データが消えちゃぁね。

 

 ZOOM HD16CDに戻すのもなんだし・・・と機材を物色していてイイ物を見つけてしまう。

 同時20ch録音可能で操作の殆どをiPadで行うコンパクトサイズの ZOOM L−20R

 

 iPad + ミキサーだと、今後バンドが解散してもiPadは残るか?

 特に年末はボーナスの支給後の大型連休が相乗効果を成し、必要性の低い&高額商品の購入を後押しする。

 

 今年は12月1週目から仙台、2週目は札幌へと出張が続き、自身の「仕事やってる感」もピークに。

 札幌出張の2日目には我慢の限界を軽く超えてしまいデジタルミキサーとiPadを出張先のホテルでポチる。

 

 ZOOM L−20R と iPad<第7世代>

 

 

 

 2019年12月購入 L−20R <¥70,180円> iPad <¥43,790円>

 

 L−20Rには6chの別MIXのヘッドホン出力が可能だ。

 バンドメンバーにはヘッドホンを着けてもらい、個々別々に自身の音と他演奏者の音を自分の好みの音量で聞いてもらうことでボーカル用のPAスピーカと駆動用のアンプも見直せる。

 ただ、購入後一発目のバンドの集まりには、メンバーにヘッドホンを持ってきてねー とお願いしたにも拘らず、だあれも持ってこ来ず。

 そこでメンバー用に手持ちのヘッドホンを準備するべくメンテナンスと性能比較を行ったので記録する。

 

◆メンテナンス

 最近はMIXに MDR−CD900を使っている。

 他の優秀なヘッドホン達は本棚に作った引っ掛け金具にぶら下げたまま放置であった。

 結果、MDR−7506 と Audio Technica の ATH−M30 のイヤーパッドがとろけていたのでメンテナンスを施す。

 

◇SONY MDR−7506 パッド交換

 2012年5月に注文後、手元に届いたのは2〜3ヶ月かかった記憶がある。

 購入後はバンドの集まりに折り畳みが大活躍する。

 

 

 既にパッツンパッツンにはち切れていた。

 

 古くなったパッドを引き剥がす

 

 

 パッドをめくってみると、リングは大丈夫そう。パッドだけ左右手配する。

 

 ネット注文で翌日には到着

 

 2−115−668−03  1,100円/片側

 

 左が新品 右がボロ

 

 見た目は新品の方が若干大きく見える

 

 周囲の溝に少しずつはめていく

 

 破らないように少しずつ

 

 片方完成

 

 右側完了

 

 この調子でもう左側も装着する

 

 

 完成。後ほど視聴比較する。

 

◇ATH−M30 パッド交換

 2012年6月 なんだか評が良さ気だったのでAmazonで購入。

 MDR−7506をネットでポチったのに在庫切れでなかなか発送されなかったので、代わりに勢いで購入したもの。

 しばらくは息子がiPhone用に使っていた。が、V6を取られてからは殆ど放置状態だった

 

 

 こいつに至っては左右のパッド同士が溶着していた。

 まだしばらく凌げそうな破れ具合だが、念のため交換する。

 

 これも注文翌日到着

 

 

 HP−M30(HPM30) 1,298円/2個入り

 

 トロけたパッドを引っ剥がす

 

 まだ使えそうだが、新品交換時の性能比較に拘りたい。

 

 ん?どうも元より小さい気が・・・

 

 かなり引っ張りながら装着を試みる

 

 なかなか入らないので何度と諦める

 

 左が交換前、右が新品 明らかにふくよかさと大きさが違う

 

 箱パッケージは純正だが、中身は???

 それとも仕様が変わったか?

 

 なんとか引きちぎる覚悟で無理やり装着する

 

 なんとか入った

 心持ち交換前よりもパッドが小さくなった感は拭えない。

 が、完成とする。

 

 

◆購入履歴と性能比較

 手持ちのヘッドホン達の購入・メンテナンス・性能を記録する。

 

 入手順に左から

 

 MDR−CD900ST MDR−7506 ATH−M30 MDR−V6 MDR−CD900

 

 

 

 音の評価には同時に聴き比べができるようL−20Rのヘッドホン出力を使用する。

 

 最大6系統+1系統のヘッドホンを駆動可能

 効率の違いをカバーして心地よい音量で比べる。

 

 音源はパソコンのiTunesでCDをMP3 192kbps で取り込み、iPhone と同期したあと

 iPhone8 →有線接続→ L−20R → Ach〜Ech各ヘッドホン

 で聞いてみる。

 

<視聴曲>

 1、SynchronicityU/POLICE

 2、Genius Of Love/Tom Tom Cluub

 3、Boom!There She Was/Scritti Polittie

 4、Night Flight/村松健

 5、Money For Nothing/Dire Straits (remaster)

 

○SONY MDR−CD900ST

 片出し ストレートコード約2.5m ステレオ標準プラグ

 5Hz〜30、000Hz 106dB/mW

 最大1、000mW

 

 

 

 

 

<購入経緯と出音>

 2008年9月購入 2014年12月リング・パッド交換 ¥14,800円

 安価&改装で有名なドンシャリ系の AIWA HP−X122 と 超コワンコワンの CP CPH7000 の他はマグネチックイヤホンレベルのヘッドホンしか持っておらず、これが私のヘッドホンの標準になる。

 純正パッドは他の7506やV6のパッドと違い、パッドの表面を直接耳に密着させるタイプ。

 耳に直接押し付けるタイプなので側圧が強めだった。

 そのままでは長時間の装着が辛いので、力技でヘッドバンドを手直ししてフィット感を緩めた。

 内側のサランネットがストッキングの如く薄く、中高音が吸収されずにダイレクトに耳に届く。

 音声帯域の減衰が少ない分か、ボーカルが際立って聞こえる。

 V6やCD900(無印)と比べると低域は少し弱く感じる。

 他のSONY軍よりも2〜3dB音圧が高く感じる。

 7506 と比べると低域は若干伸び弛み。ただ、バスドラは「とっとっ」まで軽くはなく、きちんと「ドッドッ」と聞こえる。

 ただ購入当初の音のイメージは「コワンコワン」だった。

 よく「リスニングには向かない」「長時間は聞いていると疲れる」と言われる通り、他のヘッドホンを試してみたくなる音色。

 7506用のパッドに付け替える等の改装が流行っているのは、なんとか違う音にしたいという皆の不満の表われだろう。

 後述のMDR−CD900(無印)を入手してからはMIXには使用していない。

 

○SONY MDR−7506

 片出し カールコード 約1.2m〜3m 金メッキステレオ2ウェイプラグ

 5Hz〜20,000Hz 106dB/mW 63Ω

 最大1、000mW

 折り畳み可能

 

 

 

 

 

<購入経緯と出音>

 2012年7月購入 2019年12月パッドのみ交換 ¥9,180円

 純正パッドは他のV6やCD900(無印)と同様、パッドで耳を包み込むタイプ。

 耳への側圧はCD900STに比べて緩めに調整されている。

 中央のサランネットの裏側には耳が直接イコライザに触れないようにスポンジが付いていてる。

 だからと言って遠くで鳴っているような音場ではなく直に鳴っている感は健在。ただ若干中域がまろやかになっている。

 その分、CD900STに比べて高域のさしすせその「サシ」辺りが若干強調されて聞こえる。

 低域はCD900STより伸びている感じだが強調されているわけではなく、V6やCD900(無印)と比べると低域全体は少し弱い。

 周波数特性ではCD900STの30,000Hzに比べて高域は20,000Hzまでしか出ていない数値だが、若干高域の伸びがあるように感じる。

 ボーカル音域がメインの曲でも比較的疲れずに聴くことができる。

 CD900STのようなコワンコワン域の癖は少ない。

 購入の年、タイで大規模な豪雨災害があった影響か、注文から到着までかなりかかった記憶がある。

 なかなか納品されないので勢い余って注文したATH−M30が先に手元に届くことになった。

 折りたたみタイプなので持ち運びに都合が良い。ケーブル類と一緒に専らバンドの集まりで活躍していたがCD900(無印)を入手してからは本棚のヘッドホンハンガーにぶら下がったままだった。

 

○Audio Techica ATH−M30

 片だし ストレートコード 約3.4m 金メッキステレオ2ウェイプラグ

 20Hz〜20,000Hz 65Ω

 最大1、600mW

 

 

 

 

 

<購入経緯と出音>

 2012年6月購入 2019年12月パッド交換 ¥4,687円

 7506を注文したはいいが、納期がかかり、痺れを切らして購入してしまったモノ。

 純正パッドはCD900ST以外のSONY軍と同様、パッドで耳を包み込むタイプ。

 しかしヘッドバンドの押し付けは強め。

 7年間放置されていてパッドが溶けていたのでリペアを施して試聴した。

 この価格ではコスパ最強のモニターヘッドホンでしょう。

 他のSONY軍に比べて効率が低く、5〜6dB程度上げないと同じ音量にならないが、音量を少し上げればSONY軍と勝負できる音質である。

 低域は100Hz〜200Hz辺りに盛りがありバスドラが若干モワっと聞こえる。

 しかし高域までしっかり鳴っていてCD900(無印)では判別が難しいハイハットに混ざったタンバリンの音まで確認できる。

 可動部分やケーブルの固定部分など、造りの部分のちょっとした「きしみ」音が発生して結構「音」として響く。

 ただし、この構造ノイズはシリコングリスを塗りこむことで対策出来る。

 V6が廃番となった今、これも貴重なモニターヘッドホンであった。残念ながらこちらも既に廃番。

 安価でリスニングとモニターに使えそうな機種は廃番になる運命なんだろう。

 

○SONY MDR−V6

 片出し カールコード 約1.2m〜3m ステレオ2ウェイプラグ

 10Hz〜30,000Hz 106dB/mW 63Ω

 折り畳み可能

 

 

 

 

 

<購入経緯と出音>

 2017年12月購入 ¥9,482円 CD900(無印)を入手したタイミングで購入した。

 以前から廃番になるという噂があり、「コストパフォーマンスの良過ぎる製品は短命」 を信じる私として、入手を切望していたヘッドホンである。

 至るところで「国内未発売」を目にするが、入手可能であったその理由は定かではない謎の製品である。

 高校生の息子と聞き比べをしていて、息子曰く5機種の中で「これが欲しい」というのでプレゼントした。息子の耳のセンスは案外良いのかも。

 巷の「買ってみた」「聞いてみた」レビューでは、7506 寄りの音だと言われることがあるが、手元のCD900(無印)にかなり近い音色で、ふくよかな低域と伸びきった高域を奏でる優れ物である。

 但し、手元のCD900(無印)は所詮30年物。高域はV6が更に勝る。

 高域の伸びは ATH−M30 と似ている。しかし全体の音の近さは V6 に軍配が上がる。

 当初は視聴曲に無かった  Money For Nothing/Dire Straits (remaster) をCD900(無印)で聞いた後、V6 で聞いたところ サビの所だけシンバルの裏にタンバリンの鈴音が混ざっているのが聞こえた。急遽、比較曲を追加して全機種で聞き直した結果、リスニングとしても心地よく聞こえる製品である。

 更に価格設定が 7506 と同程度なので入手当時においても モニターとして、リスニングとしてコストパフォーマンスは最高だと感じた。

 ストック用にあと一つは買っておくんだったと後悔している。

 

○SONY MDR−CD900

 片出し カールコード 約1.2m〜3m 金メッキステレオ2ウェイプラグ

 5Hz〜30,000Hz 106dB/mW 63Ω 

 最大1、000mW

 折りたたみ可能

 

 

 

 

 

<購入経緯と出音>

 2017年のド年末。仕事場の大掃除でイヤーパッドが原形を留めていないCD900(無印)を廃棄するというので頂いてきた代物。

 仕事場ではトロけたイヤーパッドの上にハンカチを巻きつけ、数回仕事に使っていた。

 この時の体験がきっかけになり MDR−CD900ST を購入することになった銘機である。

 製造後30年を裕に過ぎているダイヤフラムからは想像できないタイトで且つふくよかな低域と耳障りではない高域に魅了されてCD900STを購入したが、当然、期待していた音とは違い、ヘッドホン購入地獄に陥った元凶である。

 金ラメの入った高級感のある黒艶ケーシングとカールコードも金ラメ黒艶仕様。更に折り畳み可能。

 それまでバンドの集まりには折り畳みが出来る7506をケーブル類と一緒に持ち出していたが、CD900(無印)を手に入れてからはこいつがMIX兼、現場モニターに採用される。

 ただ、今回の比較レビューの為に色々な曲を視聴していて、ハイハットの後ろで鳴っているタンバリンが聞こえない事に気付いた。

 このタンバリンの音色をこれでもか!と聞かせるCD900STと7506、強くも無く弱くないM30、バランスよく良く聞こえるV6に対してCD900(無印)は小音量でないとシンバルに隠れて聞こえない。高域の山とシンバル音が干渉している風。

 ・・・既に寿命は全うしていたことに気付いた。

 ドライバユニットのリペアを行いたいが、入手や如何に。

 

◆あとがき

 以前にFOSTEX LR16 という16ch同時HDDレコーダーが10万円程度であったが、買いそびれて辛い思いをしていた。今回のデジタルミキサー L−20R の購入がきっかけになった5本のヘッドホンレビューは年末年始の大型休暇の間ヘッドホンを聞きまくり、なかなかの大作になった。

 驚異的にコスパの高い製品は短命で終わる。いや、メーカーとして計画的に終わらせなければ高級機が販売出来ないのだろう。

 V6は海外で超ロングセラーだったと聞く。実は国内販売を自粛しただけじゃぁないか?限定にしてでも国内再販を望む。

 

 

 

おわり